June 20, 2024 → June 26, 2024
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-とある海辺-
葵
ここが、プロデューサーが詩織さんと出会ったっていう……。
あっ、あそこ!詩織さんがいるっちゃ!
柑奈
あ……詩織さん、歌ってる……?
詩織
……♪
蓮実
なんてセンチメンタルな歌声なんでしょう……。
聴いている私たちまで、哀しくて……切なくなっちゃいます……。
海
詩織さん!
詩織
みんな……?
プロデューサーさんも……。
葵
みんな詩織さんのことが心配で、捜しにきたけんっ!
清美
お悩みなら、私たちがいくらでも聞きます!
ですから……ですから……!
詩織
……心配しすぎよ。
私はただ、好きな海を見ていただけ。
ほら、夕日がキラキラして、とっても綺麗でしょう……?
七海
詩織さん……。
詩織
私、もう気にしていないわ。
昨日、ファンの子に言われたことも。
ネットの記事のことも。
詩織
だから、もうちょっとだけ……ここで眺めさせて。
あんまり叱らないで、ね……?
-帰り道-
美優
詩織ちゃんの、あの様子は……。
飛鳥
……ああ。
嘘が下手だな、詩織さんは。
七海
きっと七海たちには言えない何かを抱えているのれす……。
ししゃもの卵みたいに、いっぱい抱えているのれす……!
葵
でも……そういうのが伝わってくるのは、
あたしたちが詩織さんと、ずっと長い間、一緒にいたからで……。
蓮実
ファンのみなさんにとっては、
ミステリアスな人に見えてしまう……
もどかしい距離ですね……。
麻理菜
もしかすると……
彼女、ずっと抱え込んでいたのかもしれないわね。
そういう悩みを。
七海
だったら、話してほしいれす!
でも、七海は……
どうすれば話してくれるのかわからないの……!
清美
いえ!きっと何か方法があるはず!
そうですよね、プロデューサー……あれ?
さっきまで一緒にいたはずですが……。
詩織
……貴方は、帰らないのね。
プロデューサー
役目があるからね。
詩織
プロデューサーとしての?
それとも、保護者としての、かしら……。
ふふ、私、そんなに子どもじゃないわよ……?
[戻ってきてほしい]
詩織
……私が、戻らないって思うの?
アイドルのお仕事に……?
詩織
…………そうね。
きっと私は、戻ってはいけない人間なんだと思うわ。
詩織
ねえ、見て。
海はいいわね。
ただ、眺めるだけで、ありのままの私を包みこんでくれる。
詩織
言葉はいらないの。
笑顔だっていらないわ。
海は私で傷つくことがない……私を傷つけることも。
詩織
何度も思ったわ……。
海に帰れたら、って。
[だめだ]
プロデューサー
自分は、恋をしたんだ。
プロデューサーとして、瀬名詩織というアイドルに。
プロデューサー
だから、教えてほしい。
あなたは、過去に何があったんだ?
海に帰りたいと思うほどの、何か……。
詩織
……。
プロデューサー
ここは、あなたに助けられた浜辺だ。あなたとの思い出の場所だ。
でもあなたにとっては、きっと別の思い出があるのだろう。
出会った日も、今も……あなたはずっと、何を眺めているんだ?
[話してほしい]
詩織
……たいしたことじゃ、ないのよ。
これは物語。そう思って聞いてちょうだい。
貴方が人魚姫のようだと思っている女の、ただの物語……。
少女の頃の詩織
また……上手におしゃべりできなかった……。
クラスの友だちになじむのって、難しいな……。
少女の頃の詩織
……海は、今日もきれい。
ここで眺めているだけで……いろんな顔を見せてくれる……。
キラキラしてたり……笑っていたり……はにかんでいたり……。
少女の頃の詩織
私……ずっとここにいたい……。
そうすれば……おしゃべりなんて、しなくていい……。
外の世界なんて……知らなくたっていいから……。
少女の頃の詩織
あ……あの……。
理科室は……その……ここ……だから……。
少女
ありがとっ!私っ、転校してきたばっかりで……!
案内してくれて助かっちゃった!
瀬名さん……ううん、詩織ちゃん!
少女の頃の詩織
……!
あ……あ……あの……
…………手……そろそろ……はなして……。
少女の頃の詩織
(手……あったかい……。
でも……きっと……この子も急いでるわ……。
私なんかが……引きとめちゃだめ……)
少女
……でねっ、その遊園地、
かわいいグッズがいろいろあるの!
いっぱいゲットして、カバンにたくさん付けちゃったりしてっ!
少女
あとね、ガイドの王子様がね、とっても素敵なんだ~!
いろんなこと教えてくれるんだよ!
本当の王子様みたい。ねっ、詩織ちゃんもそう思わない?
少女の頃の詩織
(……ううん、私にとっては
貴方がまるでその王子様……。私の知らない、
海のむこうの世界を……いっぱい教えてくれる……)
先生
えー、急ではありますが、
また転校をすることになりました。
少女の頃の詩織
(言わなきゃ……)
少女の頃の詩織
(離れてもずっと……
友だちでいようって。
メッセージ、いっぱい送るねって……)
少女の頃の詩織
あの……。
あ……あのっ……。
少女
言わなくていいよ。
少女の頃の詩織
……え?
少女
もう、無理しなくたっていいんだよ。今日までずっと、
私につきあわせちゃったもんね。詩織ちゃん……ううん、
瀬名さんって呼んだ方がよかったよね、きっと。
少女の頃の詩織
……そんな、こと……。
少女
私、よく空気読めないって言われるけどさ、それでも気づいてた。
瀬名さん、私といて、ずっと楽しくなさそうだったもん。
少女
私ばっかり笑ってて……楽しいのは私だけみたいで……
ずっと……ずっとつらかった……!
詩織
……王子様と結ばれなかった人魚姫は、もう陸にはいられない。
海の泡となって消えるだけ……海に帰るだけ。
でも、帰れないなら、ずっと海を見つめるだけ……。
詩織
そんなことが何度もあったわ……。
あの人も、あの人も、あの人も、私の前から去っていった。
「つらかった」って言葉を残して。
詩織
ねぇ、プロデューサーさん、私……
人に好かれるのって難しいわ……。
結局最後はただ独り、海を眺める日々に戻るの。
詩織
あの日、貴方と出会って、アイドルになって……。
変われるかもって思った。いえ、本当に変われたと思ったわ。
人魚姫の物語を、今度こそ、私はやりなおせるって。でも……。
詩織
……見込み違いだったわよね、貴方にとっては。
本当にごめんなさい。
プロデューサー
そんなことは……決して……。
詩織
人に好かれるのが……そして、自分の好きを伝えるのが、
アイドルのお仕事でしょう。好きな人を傷つけてばかりの人間が、
アイドルに向いているはずがないと思わない?
詩織
ふふ、気にしないで。
私はただ、自分のいるべき日常へ……
ただ独り、海を眺める日々に戻るだけ。
詩織
みんなにも、伝えてくれる……?
さようなら、って……。
助かる道はただひとつ……王子様を刺すこと。
王子様のことなんて……他人のことなんて、気にしなければ、
人魚姫は穏やかに生きていけるのでしょう。
けれど、それはできなかった。本当は……人魚姫は、
人が大好きだから。人と生きていきたいから。けれど、それが
できないのなら、独りで消えることを選ぶしかないのでしょう。
プロデューサー
違う。そんなことはさせない。
人魚姫の……いや、瀬名詩織の物語を、
ハッピーエンドにプロデュースしたいんだ。