傷つく結果になってもいい、前任アイドルとちゃんと話がしたい。その願いが届き、いさなとの対話の場が設けられる。自分の力不足が原因だと受け入れていたいさなだが、その言葉の裏に本当の望みがあるはずと泉たちは感じていた。そして、彼女も含めた全員を笑顔にするため、3人は番組を動かす提案をする。
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そういうことだから、P。
その人と話す機会が欲しい。
プロデューサー
……直接話して、何かできるかな。
余計傷つけてしまうかもしれないし、
今度はみんなが傷ついてしまうかもしれないんだ。
承知の上よ。
それでも意義があると判断したから、直談判しているの。
たしかに、何もできないかもしれません……
でも、見ないふりは嫌なんれす。
さっきは気分がぶくぶく沈んじゃいましたけろ、
ちゃんと、声を聴きたいんれす!
お魚だって、食べても美味しいってことは
知ろうとしないとわかんなかったれしょ~?
初めになまこやホヤを食べようとした人の心。
好奇心もだけど……何かできることはないかって、
試行錯誤を重ねたうえで、だったんじゃないかな。
それは、私たちにも言えること。
エラーを吐く理由は?躓く原因は?
探らなきゃ、わからない。
知れてよかったんだ。
だから、もっと知りたい。
わからないままじゃ、先へは進めないから。
プロデューサー
……わかったよ。
自分がちゃんと、話し合いの場を設ける。
だから、もうしばらく待っていて。
……今日はいろいろあったわね。
ぐっすり眠れそうれすか?
ええ、睡眠負債を返さなきゃ。
まだ歌録りもLIVEの練習も控えているのだし……。
……ふたりとも、本当に大丈夫?
大丈夫だよ。
だって会話って、プログラミングに似てるから。
……?
ふふっ、たとえ話が急すぎたね。ごめん。
正しく書かれたプログラムは、いつも応えてくれるでしょ?
でも、応答しないときもある。
それは何かしら問題が生じているとき。
会話のキャッチボールだって、感情っていうエラーが絡んで
うまく投げられない瞬間があると思うんだ。
その問題が、感情が何かを調べて、解き明かして、
エラーやバグを解消して、ようやく前進できる。
だから、似てるなぁって。
なるほどね……独特な感性だわ。
かっこいいのれす……!
やっぱり、ふたりがいるとなんでもできそうな気がします~♪
もう……七海も急にどうしたの。
いつも思ってることなんれすよ~?
七海ひとりじゃ溺れちゃいそうなときも、
ふたりがいると上手に泳げるんれす!
マキノさんが情報を集めて、
泉さんがシミュレーションして、
七海が……なんか、いい感じに動く!
バランスが取れてて、安定感があるって、
プロデューサーが言ってました。七海もそう思うのれす。
どっしり構えてるところがボウズギンポみたい~って♪
ふふっ、またひとつ魚に詳しくなれちゃった。
だからきっと、大丈夫れす。
根拠はないけど確信はあるってやつれすね!
……少し違うけれど、まあいいか。
心配は不要みたいね。
追加で必要そうな情報を探っておくわ。
得意分野だもの、任せてちょうだい。
根の詰めすぎは、めっ、れすよ?
ふふっ、お肌と思考の天敵だもの。
泉もよ?
はーい、マキノお姉ちゃん♪
マキノお姉ちゃん~♪
誰が呼んだか、魔女三姉妹ね……♪
番組スタッフ
『え、いさなちゃんの?
プロデューサーの連絡先ならわかりますけど……。
でもいきなりは、ちょっと……』
プロデューサー
そこをなんとか……!
自分からきちんとご挨拶に伺わせていただくので……!
番組スタッフ
『ん~……まあ、こっちも迷惑かけちゃってるんで……。
ディレクターに繋がらなかったから僕に電話くれたんですよね?
こっちで確認して折り返すんで、待っててもらっていいですか?』
プロデューサー
ありがとうございます……!
大丈夫です、よろしくお願いいたします。
-後日-
プロデューサー
本日はご足労いただきありがとうございます。
それぞれわだかまりのないように、お話し合いができればと。
いさな
……はい、ありがとうございます。
えっと……でも、降ろされたのは……自分に人気がないだけ、
だから。みなさんは何も悪くないので……。
いさなのP
……。
いさな
だから……せっかく呼んでもらったのに悪いんですけど、
私から話せることは、特には……。
……本当?
ほんとにそれが、ほんとの気持ちれすか?
なんだか……人魚みたいなのれす。
出したくても出せない、ほんとは伝えたい声が、あるんじゃ……。
いさな
……どうして、そんなにまっすぐ聞けるの。
知りたいから。教えてほしいんれす。
もちろん、嫌じゃなかったら、れすけど……。
いさな
…………本当は、本当はね、もっと続けたかったんです。
私、ずっと下火で……この番組に出られなくなって、
ファンに届けられる声が、また減っちゃったから。
いさな
いつもそうでした。
全部頷いて、受け入れて、声を殺してたら……
いつの間にか、ひとりでステージに立ってた。
いさな
でも、どうすればいいのかわからない。
プロデューサーはいろいろ考えてくれてるのに……
私は何もしない、できない、ダメな人間なんです。
いさな
アイドルになったのも、友だちに誘われたからで。
その子も、いまは違う子と、手の届かない場所にいるし……。
いさな
私は彼女と違って強みもないし、
だから選ばれなかったことにも、納得してます。
いまさら、やりたいこと……なんて、おこがましい……。
月並みな言葉になっちゃうけど……諦めちゃダメだよ。
おこがましいなんて、そんなことない。
貴方の特技で、使えそうなものがあったわね。
とことん調べさせてもらったわ。これまでの作品も。
私は好きよ。
いさな
え、え……!?
作品って……な、なんで知って……?
番組内コーナーはまだ検討中だったよね。
なら、そこを使うことはできない?
いろいろ考えてみましょ~!
七海たちも、あなたも、みーんなが笑顔になる魔法を!
いさな
ど、どうして、みなさんが……そんなに……。
私は、今日会ったばっかりの、無関係な他人なんですよ……?
知れたから。
また友だちのとなりに立ちたいっていう、
心の奥の、本当の望みを。
番組D
……いさな君にも固定のファンがついている。
もしかしたら、予算内で相乗効果を見込めるかも……。
限られたものにはなってしまうが……。
プロデューサー
そういうことでしたら、提案があるのですが。
いさなのP
あ、送ってくださった資料、拝見しました。
みなさん、いさなのことをここまで考えてくれているなんて……。
いさな
え、っと……私……。
まだ……届けられるん、ですか?
届けるんれすよ!
あなたの声を、あなたの周波数で!
踏み出すことは、きっと怖くない。
だからもっと教えて?
あなたのことを。