June 20, 2024 → June 26, 2024
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人魚姫は、海が好き。
海は広く、どこまでも続いていて、
いつだってありのままの自分を包みこんでくれるから……。
それがたとえ、どんな自分であったとしても……。
詩織
……さて、と。そろそろ戻らなきゃね。
みんな心配しているかもしれないわ。
……あら?
海
詩織さーん。おーい。
葵
こっち!さっきこっちのほうでヤドカリを見てたっちゃ!
ほら、プロデューサーもっ!
[詩織を呼ぶ]
プロデューサー
詩織、どこにいるんだ?
詩織
みんなに捜させちゃったのね……。
笑顔……笑顔……。
ん……よし……!
詩織
プロデューサーさん、みんな!私、ここよ!
ふふっ、海の魅力に、すっかり夢中になっちゃってたの……♪
-沖縄・ビーチ-
詩織
やっぱり、すごく綺麗……♪
蓮実
詩織さん、シーグラスを見つけたんですね。
遠い海からの贈り物……♪
詩織
ええ、さっき拾ったのよ。
こうやって陽射しにかざすと、キラキラ輝くの。
まるで光が、奥底に隠れていたかのよう……。
蓮実
ふふっ、乙女心みたいですね。
ミステリアスって言わないで、
暴いてほしい、私の不器用な心を……なんて♪
清美
あっ!おおっ!
こ、これは……向こう側へ繋がりましたね!
長い戦いでした……!
柑奈
その調子ですよ、清美ちゃん!
向こうのおふたりに負けないくらい、
素敵なお城を作りましょう!
葵
詩織さん、楽しそうやね。
海
ああ、詩織さんにとっては、ひさしぶりの凱旋だからね。
事務所をあげての本格的な沖縄ツアー!
今回その真ん中にいるのが、詩織さんさ。
葵
今日はまだパンフの撮影だけやけど……。
いま詩織さんが近くにきてるって知ったら、
ファンのみんなもびっくりするっちゃね!
海
ふふ、さっき、ファンらしい人たちが歩いてるのを見かけてさ、
盛り上がってるのを聞いちゃったよ。
実感するよね、やっぱり詩織さんは「地元の星」なんだ、って!
海
……明るくなったよね、詩織さん。
葵
うんっ。楽しくておちゃめな詩織さんも、
ミステリアスで物静かな詩織さんも、
どっちも素敵な女性で……憧れるっちゃ!
文香
……では、読みますね。
「恋に落ちた人魚姫。」
文香
「来る日も来る日も、人魚姫は海を眺めます。
その姿は、とても美しく、謎めいていました。」
薫
あーっ!かおる、気づいちゃった!
詩織お姉ちゃんって、人魚姫みたいだよね!
愛海
そうだねー♪
やわらかそうなところとか、やわらかそうなところとか……♪
うひひ♪
仁奈
なるほどー!人魚姫はやわらけーでごぜーますね!
プロデューサーは、どう思うでやがりますか?
プロデューサー
たしかに、詩織は人魚姫のようだね。
プロデューサー
昔、浜辺に打ち上げられて気を失っていたとき、
詩織が介抱してくれたんだ。そのとき、ひと目で恋に落ちたよ。
彼女は素敵なアイドルになれるってね。
七海
コイ……?
海にもコイがいるれす?
麻理菜
ふふ、プロデューサーとしての、アイドルへの恋よ♪
それじゃ、人魚姫の詩織ちゃんにとって、
プロデューサーくんは運命の王子様ってところかな?
プロデューサー
王子様なんて、おこがましいよ。
アイドル瀬名詩織には、たくさんのファンと
運命的な出会いをしてほしいと思ってるんだ。
みく
Pチャンてば、なかなか言うにゃ~♪でも、そうかもっ。
みくたちアイドルにとっては、ファンのひとりひとりが王子様!
運命の尻尾と尻尾で結ばれているのにゃ!
詩織
結ばれている、か……。
そうね、今の私は結ばれている……。
詩織
仲間のみんな、プロデューサーさん、
そしてファンの人たちとも……。
詩織
(……故郷の海を見ると、つい思い出してしまう過去が、
たくさんあるわ。でも……私は「今」を生きてるの……。
だって……私はもう、ちゃんと笑うことができるもの。)
詩織
(私は……好き……。仲間のみんなが好き。
仲間に囲まれて、笑ってるこの時間が好き。
そして、私に笑いかけてくれる、ファンのみんなが……)
ファンの少女
うそつき!
詩織
……!
柑奈
あら?
こんにちは♪どうかしましたか?
清美
きっと私たちを誰かと間違えているのでしょう。
……こほん、落ち着きましょう。
私たちはですね、べつに怪しい来訪者というわけでは……。
ファンの少女
前に詩織ちゃん、インタビューで言ってたもん!
「故郷の沖縄で、笑顔の私をお見せします」って!
だから私、会いに来たのに!
ファンの少女
詩織ちゃんのうそつき!私、見てたよ?
さっきからずっと、頑張って笑おうとしてたでしょ?
……ううん、今日だけじゃない。
ファンの少女
いつも、笑おう、笑おうって無理してるよね。
握手会でも、トーク会でも……。
私だけ笑ってるみたいで……つらかった……!
詩織
……っ!
???
私ばっかり笑ってて……楽しいのは私だけみたいで……
ずっと……ずっとつらかった……!
ファンの少女
ねぇ、詩織ちゃんは本当に、ファンのこと好き?
私たちといて、楽しい?
……アイドルしてて、楽しい?
詩織
私……は……。
人魚姫は、大好きな海を旅立ち、陸にあがる。
王子様に、胸の熱い想いを伝えたかったから……。
きっと伝えられると、信じていたから……。