October 19, 2021 → October 28, 2021
魚を捌けるようになって、家の人々に成長を見せる。そんな計画を立てた琴歌は、実家のシェフたちを説得して、七海とマキノのサポートを受けながらキッチンに立った。七海が魚を処理する光景に一度は気を失ってしまうが、琴歌は魚を知りたい、好きになりたい気持ちのきっかけを得たのだった。
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-西園寺邸-
琴歌・七海
たのもぉーーっ！！
マキノ
お邪魔します。
メイド
おかえりなさいませ。琴歌様。
そちらは、ご友人の方々ですね。
そして......そのクーラーボックスは......。
メイド
また、お魚でしょうか？
でしたら、わたくしたちが......。
琴歌
たしかに、中身はお魚ですわ。
ですが......今日は、預かってもらわなくて大丈夫です。
メイド
で、ですが......。
琴歌
先日のお魚は、
みなさんに捌いていただきましたが......。
琴歌
今日は！私が！自分で！
琴歌
捌きますわ！！
メイド
だ......駄目ですよ、お嬢様！
旦那様にも許可をいただいておりませんし、それに......。
シェフ
そうですよ、お嬢様。魚を捌くのは、とても大変です。
ジャガイモや人参とはわけが違うのです。
どうか我々に任せて......。
琴歌
みなさんが私に気を遣ってくださっているのは、
もちろん理解しています。
ですが、いささか気を遣い過ぎですわ。
琴歌
以前、ようやく厨房に入れていただいたときも、
シェフもメイドも執事も総出でじっと見守って......
私ももう、幼子ではありませんのよ。
シェフ
むう......。
琴歌
周りに守っていただいているお子様のままでは、
きっと一人前の大人にはなれません。
琴歌
私の成長を......いえ、成長していく決意を！
今日ここで、みなさんに見てもらいたいのです！
シェフ
それは......おっしゃる通り、ですが......ッ！
琴歌
大丈夫。お父様には、私のほうからあとでお話をしておきます。
それに、お魚料理に造詣のある七海ちゃんと、
あらゆる知識を持ったマキノさんがともにいらっしゃいます！
マキノ
あ、あらゆる......極カサポートするつもりよ。
琴歌も、これまでの仕事で何度か料理をしているようだし。
そんなに心配いらないでしょう。
七海
もちろんお魚料理なら、頭の先から尾ビレまで
この七海にお任せなのれす〜♪
琴歌
......ということですから。
もはや、扉を閉ざす理由などありませんわっ！！
メイド・シェフ
ぐ、ぐぅううう......ッ！！
メイド
............琴歌様のそのお覚悟、伝わってまいりました。
凛々しいお背中を、押させていただきます。
シェフ
............旦那様にお叱りをいただいても、よいのかもしれません。
いえ！！
ここでお嬢様の決意を無下にするほうが、お叱りいただくかも。
琴歌
では......！
シェフ
ええ、どうぞ。
お好きなだけ！魚をお捌きになってください！
お怪我だけ、気をつけて！
琴歌
ありがとうございます......！！
-厨房-
七海
ふわぁ〜！とっても広いのれす！
マキノ
琴歌の計画は、
『お家の人にひとつ成長を見せること』だったのね。
琴歌
ええ。でも、それだけではありませんわ♪
『お魚を捌けるようになる』......これも、計画のひとつ！
マキノ
......七海が付いているから、手順は問題ないと思うけれど。
その......シェフの人も言っていた通り、けっこうグロテスクよ？
琴歌
肝を鍛えるのも、大切なことですわ！
覚悟はできておりますともっ！
マキノ
そ、そう。
あまり無理はしないようにね。
琴歌
では......七海ちゃん！
手ほどきを、よろしくお願いいたしますわ！
七海
はーい！
七海
れっつ・くっきんぐ〜♪
マキノ
ソウダガツオの、ヒラソウダ......刺身が主な食し方で、
ともすればカツオを超えると言われる赤身魚。
大事なのは、釣り上げた際の血抜き......。
マキノ
船酔いでフラフラになりながら血抜きをしていたのは、
美味しくいただくためだったのね......。
さすが、お魚系アイドルと言わざるを得ないわ。
七海
どんな食材も、一番美味しくいただきたいれすから！
とっても美味しいよ〜って、知ってもらいたいの〜♪
琴歌
さて、こちらも準備はできましたわ！
はじめに何をなさいますの？
七海
まずは、頭と内臓を、取り除いていきます♪
こうして、エラの部分に包丁を入れて〜。
琴歌
あ、頭と、内臓......！？
マキノ
......琴歌は、まず七海が処理をしたものを
下ろしていくのがいいんじゃないかしら......。
琴歌
そ、そ、そうですわね......。
あっ......うぅ......お魚の、頭が......。
七海
次は、お腹をぴ〜っと開いていきます〜♪
琴歌
ひぃっ......！
に、逃げてはいけません......琴歌！
命をいただくのですから、しかとその様を見届け......。
七海
こうやって頭を引っ張ったら〜......ほらっ！
一緒に内臓を取り出せるのれす！
えいっ！
七海
びしゃっ！
七海
って、ちょっと内臓さんが飛んでいっちゃいましたけろ、
気にしないでください〜。
あ、ここについた血は洗って......。
琴歌
見とど......け......
マキノ
こ、琴歌！？
琴歌
きゅうう......。
琴歌
うう......気を失ってしまうなんて、不甲斐ないですわ......。
こんなことではいけませんのに......。
マキノ
無理もないわよ。段々と慣らしていくことが大事でしょうし。
家の人たちも、これまでとは違う印象を持ったでしょうから。
ひとまずは、それでいいんじゃない？
琴歌
そうですわね......。
何事も少しずつ、ですわね。
七海
お刺身は冷蔵庫に入れたのれ、あとでいただきましょ〜！
でも......あのぅ、琴歌さん......。
お魚、怖くなっちゃったり......しましたか？
琴歌
......いいえ。
むしろ、もっと知りたい、好きになりたいと......
そんな気持ちを得るきっかけとなりましたわ！
琴歌
ですから、お礼をさせてくださいませ♪
琴歌
おふたりとも、とってもお似合いですわよ♪
七海
わぁっ、かわいいお花なのれす〜！
お刺身みたいに、七海にも彩りを添えて〜♪
マキノ
......粋な計らいをするんだから。
フリージアの花言葉は......フフッ。
